第5章

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 この女の名は、毛利阿澄(もうりあすみ)。  俺とは中学時代からの同級生であり、多摩川沿高校のフットサル部の現部長である。  スポーツウーマンらしいさっぱりとしたショートカット、凛々しい眉と目元、気の強そうな顎のラインをした御厨とは別種の美少女だ。  ただ、異なる点は、男子にも引けをとらない気の強さをもって、いわゆる運動女子のカリスマ的存在であるという点だ。  御厨が文科系、優等生系、真面目系、その他もろもろを引っ張るカリスマであるとすると、それとは正反対のタイプを仕切るカリスマを持っているといえばいいか。  男女混合で場合によっては合コンサークルにでもなりそうなフットサル部がそれなりに運動部として活動できているのは、彼女の睨みがきいているからだという。  ちなみに同級生ではあるが、俺との接点は微妙に少ない。  中学時代に体育祭実行委員とかで一緒に活動したことがある程度だ。  クラスだって中学一年のころに一緒になったきりで、高校二年になってまたもクラスメートになって以来、挨拶ぐらいしかしたことがない。  だって、俺は帰宅部のレギュラー争いで忙しいし、こいつは学校の中心人物として忙しいので、お互い生息圏が違うのだから。  問題は、何故こいつが御厨のキーを所持していて、さらに御厨の持ち物を盗んだ犯人なのか、という点であったが、それはなんとなく解決できたような気がする。 「はぁ……」
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