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「柊、お前はボクが雷龍を使役せしものと言い切るのか。
ボクは今だ、その姿を認めたことがない」
「私の柳蓮【りゅうれん】が申しております。
ですから、貴方は紛れもなく、雷龍の玉を抱きしもの。
それは貴方の御手に刻まれし刻印が証。
宝さまと火綾の君には、これより時間が許す限り
私と行動を共にして頂きたく、お役目を伝えに参りました。
龍を抱きしものの務めは、 各地に渡る全ての結界をその身に移し、
弱りし土地に赴いて、その地の結界を強固にすること。
私はこれまで、娘を華月殿に託して
この地を守るために奔走してまいりました。
この後は、お二人の後継者にその役目をしかと伝承したく存じます」
柊はそう言うと、静かにお辞儀をした。
ふいに脳裏に浮かぶのは、
見知らぬ土地で、真っ白な衣を身につけた青年。
その青年は、鞘から剣を解き放って
何かを流れるように切りつける。
斬りつけた傍から、バブルがはじけるように
連なって金色の雨が降り注いだ。
突然傾いだ体を支えるのは飛翔。
「どうした?」
「何でもない。
不可思議なビジョンが映っただけだ。
それより柊、ボクたちは継承者として
何を学べばいい」
雷龍を使役するのが当主の証。
そして雷龍の神子に成すべきことがあるのなら、
ボクはそれに全身で向き合うだけ。
それがボクに与えられた宿命ならば……。
「明日の明朝、お三方には私のお供を」
柊は意味深に告げて、
一礼すると、華月の病室を後にした。
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