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「ふふっ、飛翔。
少しずつ神威君と仲良くなれてるみたいだね」
そう言いながら白衣をロッカールームに片付けて、
ジャケットを羽織ると、鞄を掴み取る。
何となく由貴が落ち込んでいる時のサイン。
「由貴、今日時雨はいるのか?」
「どうだろう。
時雨も最近は、帰ってこない日が多いから」
「なら、今日は俺んちに来るかっ。
礼をしたかったしな」
そう言ってアイツを自宅へと招く。
最上階ではなく、早城の家に連れ込んで
母さんの晩御飯を食べた後、もうひと勉強して眠りに入る。
次の朝、由貴を鷹宮の駐車場まで送り届けて
医局に顔だけ出すと、受持ち患者のデーターだけ確認して
自分のノートPCの資料を増やしておく。
そのまま擦れ違うスタッフたちに会釈をして、
海神へと車を走らせた。
13時半。
海神のセキュリティーシステムを突破して、
アイツが生活している、ポーン寮の前に車を駐車すると
寮の待合室へと姿を見せる。
アイツは手荷物の鞄を持って、
俺の方を真っ直ぐに見据えていた。
「神威、行くぞ」
一言声をかけて、アイツが引きずりそうにしてた
鞄を持つと、そのまま車へと向かった。
すでに何度かアイツを乗せて走らせている愛車の前まで来ると、
助手席のドアを開けて、アイツは車のナビシートに座って
シートベルトをつけた。
手荷物を車内に片付けて運転席に座り込んだ俺は、
エンジンを心地よく振動させて車を走らせた。
海神校独自の、ギリシャの街並みを再現した学園都市を
走り抜けて門を出ると、一気に空間は日本の田舎風景へと変わる。
「神威、徳力の当主宛に一通の手紙が届いた」
そこでジャケットの内ポケットから取り出した、
徳力の総本家へと届いていた手紙をアイツへと手渡した。
「飛翔、これは?」
「万葉曰く、生駒の刻印と言うことだ」
「生駒?」
それだけ伝えながらも、
俺にはそれが意味するものが何なのか
全くわからなかった。
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