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飛翔の提案とボクの利害が一致して
転校した海神校。
昂燿時代のデューティーの心遣いもあって、
ボクは新しいその場所で、新学年を迎えることが出来た。
完全寮生活の男子校だった昂燿校とは違って、
転校した海神校の教室には、男女が同じ机を並べる。
それだけでボクには新鮮だった。
平日は寮で寝泊まりをしながら、
学校生活を満喫し、土日になると外泊届を出して
アイツと過ごすマンションへと戻る。
GWの後から、
ボクはそんな生活を繰り返していた。
飛翔によって手渡された携帯電話。
そんな携帯電話を握りしめながら、
ボクはもうすぐかかってくるであろう定期連絡を待ち続けていた。
「徳力君、僕たちはもう先に休むね。
21時を過ぎて、消灯時間だから」
寮のルームメイトが声をかける。
「先に眠ってくれて構わない。
ボクも家の者と電話したら休むから」
「そっかぁー。
徳力君のお父さんもお母さんも忙しいんだね」
悪気のない言葉ながら、
チクリと心が痛むのを感じながら
心を殺して、なんでもないように切り返す。
「両親はもう居ないから。
電話の相手は、家の者だよ」
家族と……アイツを呼ぶことも紹介することも
抵抗がある。
だけど……アイツを叔父さんと呼ぶことにも
抵抗がある。
アイツはアイツ。
ボクの中で、呼び捨てくらいがちょうどいいんだ。
アイツは嫌がるかもしれないけど。
「お休み。
電気消すよ」
「うん。有難う。
おやすみなさい」
ルームメイトはそう言うと布団の中に潜り込む。
ボクは携帯を握りしめながら、
そのまま電気を消してドアの外へと出かけた。
お手洗いに行くふりをしながら、
廊下の窓から、暗い外の景色を眺める。
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