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「飛翔、これは?」
「万葉曰く、生駒の刻印と言うことだ」
「生駒?」
生駒・徳力・秋月。
徳力の家に伝わる本の中で、
この三つの一族の龍の物語が言い伝えられている。
ボクの一族にまつわるのは、雷龍翁瑛【らいりゅう おうえい】。
桜瑛が居る秋月にまつわるのは、炎龍【えんりゅう】
そして……この手紙を寄越した、生駒にまつわるのは、
蒼龍【そうりゅう】。
だけど…今のボクには、
雷龍とコンタクトとる術なんて持ち合わせていない。
ボクが感じたのは、
あの日……優しく降り注いだ金色の雨。
雨の中、ぼやけるように浮かんでいた龍のシルエット。
だから……雷龍が助けてくれたのだと思えた。
だけど……あれが、
雷龍だって言う確信は何処にもなかったんだ。
*
徳力家ご当主、徳力神威殿。
雷龍の一族の長となられし貴公に、
申し伝えたいことがあります。
明日【みょうにち】、19時。
華月殿の病室でお待ち申し上げる。
柊
*
「飛翔、19時に華月病室で会いたいと記されている」
「そうか。
行きたいか?」
「当主として行く」
「なら俺は立ち会うだけだ」
飛翔は車を走らせながら、ボクを見ることなく答えた。
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