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「怒らないのか?」
「神威が決めたのなら仕方ないだろう。
お前が大人しく甘んじるとは思えん。
なら許可をして見届ける方が得策だろう」
その言い方はその言い方で癪に障る。
何時までもガキ扱いをして。
一族の中で、ボクに対して
ガキ扱いするものは今まで居なかったと言うのに。
「なら一度マンションに戻って支度してから出掛ける。
各事業の報告を受けたい。
万葉を呼べ」
当主モードに切り替えた後も、
アイツは敬うでもなく、いつもの調子で
命じた用件だけは確実にこなしていく。
マンションに戻って、万葉の口から
寮に滞在していた、ここ1週間の徳力の事業報告を受ける。
その状態を把握してから、正式に当主として、
アイツを……お父さんが託した雷龍翁瑛の札を持つ飛翔を、
ボクと同格の地位になったものと一族に通達させる。
当主の後見役として華月は、そのまま据え置いて
飛翔をボクの補佐役へと正式に任命する。
それと同時に、分家末端の早城の地位を事実状のナンバー2へと
格上げさせる。
これで……アイツの存在は、
当主のボクが認めたことになる。
何事もボクの意志が優先させる
古からの柵も、こんな使い方ならいいかも知れない。
通達作業を終えた途端に、
最上階のベルを鳴らす訪問者。
それは早城の養父。
お礼を言いに来たらしい養父を
飛翔は追い返すように制して、
そのままボクの方へとやってくる。
「ガキが気を使ってんじゃねぇ。
まぁ、だが……神威の補佐役って言うのも悪かない。
これで正々堂々と、神威をしめることが出来るな」
そんな憎まれ口を叩きながら、
目の前のアイツは意味深に笑う。
18時を過ぎた頃、アイツがボクの部屋を訪ねる。
家庭教師に出された課題をこなしながら、
勉強をしていたボクに「出掛けるぞ」っと声をかけた。
分厚い本を閉じて、
アイツの待つリビングへと姿を見せる。
徳力の当主として相手に対面する場合、
ボクの正装は仕立てられた当主としての紋付き袴。
黒の紋付を身にまとって、
アイツの元へと出ると驚いたような顔を見せた。
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