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彼は今、檻の中にいた。
なぜいるかは大体理解していたはずだが言葉にしろと命ぜられても、
「そりゃ無理なこってす。あなたも何故生きているかいえないでしょう。」
と言う他ないだろう。
檻の中は非常に暗く、外で雨でもふっているのかじとっと湿っている。
しかし彼は不快な顔を一つと見せず、どちらかと言えば、穏やかな顔で天井の染みを見つめている。
この檻に看守はない。
彼は彼であって囚人ではない。
そこに檻があり、彼はそこにいるだけである。
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