第1章

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僕には、人生の残り時間が視える。 人の心臓がある位置、つまりは左胸に数値が見えるんだ。 僕はそれを『Life limit』ライフリミットと呼ぶ。 いや、自分の中でそう名付けている。 とはいえ、信じられないだろうから例をみせよう。 例えば、駅のホームにある椅子に座っている子連れのオバサン。 そのオバサンの左胸には 『53,125,12,10,28』 という数字が見える。 これは、あのオバサンが残り53年,125日,12時,10分,28秒間生きられるということ。 逆に言えばオバサンの命は残り53年,125日,12時,10分,28秒しかないってことでもある。 ちなみに、その子供は 『82,92,04,44,39』 つまり、82年,92日,4時,44分,39秒の人生があるということ。 うーん、そうだな…。 あ、居た。 僕の隣に立っている、フードを被った大学生くらいの人の隣に立っている、スーツの人。わかるかな? 黄色い点字ブロックの上に立っている人。 あの人は残り時間 『00,00,00,01,14』 だいぶわかってきたと思うけれど、この人の命はもうすぐ終わりだ。 ほら、電車が来た。 『00,00,00,00,19』 僕の隣立っていたフードを被った男の人が、線路へと一歩歩み寄った。 彼は、自殺する " つもり " だ。 あと、一歩前へ進めば彼は線路へ落ちる。 その時だった。 スーツを着た男の人が、フードの男を引っ張った。 フードの男は驚いて、思わずその腕を振り解く。 その拍子に、スーツを着た男の人は体制を崩した。 『00,00,00,00,03』 電車は、止まらない。 『00,00,00,00,02』 まるで、スローモーションみたいに彼の『Life limit』は刻まれる。 『00,00,00,00,01』 ____カシャン 『00,00,00,00,00』
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