6人が本棚に入れています
本棚に追加
(しかし...)
「なぜここに連れてきたのじゃ?獣類を相手にする医師は町にいるであろう。」
沙鴎は少女の身に付けている着物を見やった。
今では雨に濡れているが粗末な物ではないと分かる。
賤民ではなかろうが、裕福な家柄の子というわけでもなさそうだ。
少女は首を横に振った。
少しばかり、髪についた水滴が飛ぶ。
「確かに...いるよ...。でもタマは本当はお父さんやお母さんに内緒なんだ...。」
そしてがっくりとうなだれた。
「いつも、お父さんが困ったら...お山の池にいる神様を頼りなさい、って言っているのを思い出して...。」
沙鴎はタマと少女を交互に見た。
助けてあげたい。
だが、自分にそんな力などあるのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!