沙鴎の徒然日記 第一幕 出会いと髪飾り

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(しかし...) 「なぜここに連れてきたのじゃ?獣類を相手にする医師は町にいるであろう。」 沙鴎は少女の身に付けている着物を見やった。 今では雨に濡れているが粗末な物ではないと分かる。 賤民ではなかろうが、裕福な家柄の子というわけでもなさそうだ。 少女は首を横に振った。 少しばかり、髪についた水滴が飛ぶ。 「確かに...いるよ...。でもタマは本当はお父さんやお母さんに内緒なんだ...。」 そしてがっくりとうなだれた。 「いつも、お父さんが困ったら...お山の池にいる神様を頼りなさい、って言っているのを思い出して...。」 沙鴎はタマと少女を交互に見た。 助けてあげたい。 だが、自分にそんな力などあるのだろうか。
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