夏のはじまり

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* 「久しぶりだな、純。お前、正月は絶対に帰ってこないから、寂しかったぞ」 「本当よねぇ。帰ってくるのも、いつも突然だし。分かってたら、ご馳走用意したのにな」 「ごめん、父さん、母さん」 その日の夕飯。 4人がけのテーブルで、一年ぶりに埋まった私の隣の席で、純は両親との会話に花を咲かせていた。 母が言ったとおり、ご馳走とは言い難い料理が皿の上を飾っている。 カレーに、大葉とアスパラの天ぷら。あとは、父以外は誰も食べない茄子の漬物。 純の帰省を母が知ったのは、買い物を済ませて帰ってきた後だったのだから、今さらメニューは変えれなかったのだろう。
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