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暑い夏の正午。
ジリジリ太陽が照りつけて、地上を焦がしていく。
うちにはクーラーなんて高級品はないけれど、すぐ裏にある林のおかげで、太陽を隠してくれるから、少しはマシに思う。
このド田舎で感謝できるところなんて、それくらい。
インターホンもない玄関の引き戸が、勝手にガラガラと開いた。
昔ながらのネジ式の鍵なんて、かけるのは夜だけ。
そんな古びた田舎の一軒家に、“彼”はいつも唐突に帰ってくる。
「……おかえり」
私は、笑顔でむかえる。
「ただいま、久しぶり」
弟を。
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