1.病院で・・

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 ピ! 僕が霊感ケータイのスイッチを入れて、カメラモードにする。 彼女の見ている隣の病棟をカメラ越しに覗いてみた・・ ファインダー越しに見る暗い病棟・・・画面には真っ黒で何も映っていない。 カメラをちょっと横に振ってみる。 暗い病棟の1階部分の入口がエントランスの照明に照らされて、僅かに明るくなっていた。 その入口付近に、白くて丸い物体が映し出されていた。 何だろう・・ そう思って、目を凝らして見る。 丸い光の中に、黒い頭らしきものが確認できた。 よく見ると、白い部分は、人の背中だ。 その背中から伸びた両腕が、先程の頭を抱えている。 背を丸めて、前屈みになってうずくまっている姿だった・・ 何か、物思いにふけっているのか・・ この世の終わりとでも思っているのか・・ 悩んでいるのか・・ 苦しそうな感じも見て捉えられる。 「あの人は、家も家族も失って、絶望の思念が強いわ・・」 彼女がポツリと言った。 「空襲で、無くしたの?」 僕が聞いてみる。 「うん。  その後に、爆撃を受けて負傷したみたいね・・」 その人の辿ったエピソードを淡々と解説する彼女。 戦争で、全てを失い、そのまま亡くなったなんて・・ その隣に、うつぶせになっている人の形をした白い塊。 少し離れた所で、無数の光が右往左往しているのに気づいた。 泣いて抱き合っている親子のような白い影も浮かんでいた。 彼女が「うじゃうじゃ」見えるというのも納得した。 こんなに、沢山の人が、この病院で息を引き取った事実・・ いや、ここで収容されずに亡くなった人も大勢いるのだろう。 なんだか・・ 悲し過ぎる・・・ そう思った時・・ 先程のうずくまった白い物体が、チラッとこっちを向いた気がした。 彼女が咄嗟(とっさ)にケータイに手を掛けて、僕が見るのを止めた。 「ヒロシ君!  あんまり、霊に深入りしたらだめだよ!  向こうから憑いて来られると厄介だよ。」 日頃から彼女が良く言っている言葉だ。特定の霊に関心を持って、肩入れしてしまうと、頼られて来るのだ。 その霊を成仏させようものなら、次々と他の霊が憑いてくる・・ 「無視」という言葉は言い過ぎかも知れないけれど、冷たい様に見えても、見てみぬふりをするのが得策だという・・
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