ユグドラシルの恩恵

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「………ダルシスはのぅ、歴代の王が必要なしと判断したモノを、決して無下にはしなかった、それは、サラを重んじて、彼女を敬愛する故のコト」 「ち、ちょっと待て、サラと言えば、ラナ王国統一の王だろ?か、彼女って…………」 サラを、彼女と呼んだセレナ。 聞き間違い等ではない。 然し、この城のホールには、ダルシスの信仰の元、サラを見立てた銅像まで置いてあった筈。 そしてそれは、確かに男だった。 「フッ、サラは女性じゃ、そなたですら知らぬところを見ると、このコトを知る者は、もはや妾しかおらぬじゃろうて」 「……………」 だが、実際は女性。 つまり、ダルシスは彼女が男であると偽装し、わざわざ銅像まで立てていたことになる。 「まさか、サラが女だったなんて」 一度、言葉に詰まったシェラは、その少し後で、信じられないように台詞を紡いだ。 それに、何の関係が有るのかは解らないが、そこまでして、ダルシスは何を守ろうとしていたのか。 「女性であるコトを伏せ、歴代の王達は彼女の思想を継承した、じゃが、国民を愛する有能な王達は、次第にサラの言い付けを破り、未来等は自分達の手で造りあげると信じていく」 「………………」 「何も間違って等おらぬ、人はそれでこそ成長し、発展するであろう、然しながら、コトが起きた今の世で、何が正しく誰が未来を見ていたか」 「………………」 「妾は、この事を知った時、彼女を尊敬せざるを得なかった、そして、愚鈍な王たるダルシスに、心から感謝したモノよ…………ふっふ」 …………… セレナは、真っ直ぐに部屋の奥を見つめ、凛々しい姿で手を向ける。 例えシェラとて、今の彼女の邪魔は出来ない。 それほど、神々しい者に見えたからである。 「証拠を見せよう、我が息子よ」 ……………… ………
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