第2章

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真っ白な外壁の右端にある自動ドアをくぐると、優しい色の板の間のような床が続いていて、その先にはマットな質感のこれまた白いフロントがどんと構えていた。 浩介は鞄の中からパスポートと印刷しておいたホテルの予約確認書を取り出し、カウンターの上に静かに置いた。 「こんにちは。予約は・・・してくれているのね。いらっしゃい。」 フロントの女性は顔を上げ、浩介の顔を見て自然な笑顔で歓迎した。 無駄な肉のついていないすっきりした面長の輪郭に、胸元まで伸びた金色のストレートのやわらかい髪。 清んだ湖のような水色の瞳と眉の感覚は狭く、じっと見つめられると目を反らせなくなる。 美人というよりもハンサムと言ったほうがしっくりくる顔立ちだった。 アイロンのしっかりかかった白いシャツで、シャンと背中を伸ばし、キーボードをカタカタと叩きデータベースと照合する姿を見た浩介は、自分もつられて姿勢を正した。 「あなたの部屋は401よ、コースケ。共有スペースのポットのお湯はいつでも使ってね。それから、環境のために、バスタオルを毎日洗濯せずに水を大切にする取り組みをしているから、協力してくれるのなら洗濯を希望しない日は青のフックに、希望する日は赤のフックにバスタオルをかけてね。」 そう言ってフロント係はパスポートと予約確認書をフロントデスクの上にすっと戻し、それからカツンと部屋のキーを置いた。 「分かりました。ありがとう」 キーを受け取り、浩介はエレベーターに向かった。 雪女郎と狐狸精も同じエレベーターに乗り遅れないように、浩介の後に続いた。 「もうちょっとそっちに寄ってよ、おばさん!」 「お前こそそっちに寄れ!」 狭いエレベーターで押し合いへし合いを繰り返す2人だったが、3人乗りとは知らない浩介は涼しい顔で、1・2・3・・・、と変わっていく階数のデジタル表示を見つめていた。 4階に到着すると、部屋はエレベーターのちょうど前だった。 「401、ここかあ」 鍵穴にキーを差し込み、ドアノブを右に回す。 中に入ると、白い掛け布団がかかったダブルベットで部屋のほどんどが占領されていた。
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