第2章

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壁とベットの間を窮屈に通り抜けると、部屋の奥にはこじんまりとした机があり、その上には額縁に入った小ぶりの1枚の絵が飾られていた。 ノルウェーの緑の杉の絵のようだったが、横にある窓から注ぐ逆光で細かい色彩までは捉えることができない。 机の横にスーツケースを広げると、 「狭いけどいい部屋じゃん」 と浩介は満足そうに言った。 飾りっけのないその部屋は、海外旅行が初めての浩介にとっては、「北欧シンプル」な洒落た内装に映ったのだ。 すると一息つく間もなく、スーツケースから着替えとバス用品を取り出すと、浩介は部屋を出て行った。 物価の高い北欧で、父親の手配した宿は価格が安めのホステルだった。 さすがに二段ベットの相部屋ではなく、個室のほうを予約してくれていたが、トイレとシャワーは共同だった。 バタンと扉が閉まると、部屋の残された雪女郎と狐狸精はお互い顔を見合わせた。 「お前は風呂には行かんのか?」 「お風呂なんか生まれてから入ったことないわよ!こうね、毛並みをとかすだけで十分なの。」 そう言って狐狸精は上に向けた左の手のひらからポンっと黒光りする櫛を出して、髪の毛をとかす仕草をした。 「水牛の角の櫛は女をあげるのよん。そういうおばさんは行かなくてよかったの?」 狐狸精がそう尋ねると、雪女郎はブルっと身震いし、口元をヒクヒクさせて言った。 「水浴びなどしたら一瞬で溶けてしまうわ・・・」 それを聞いた狐狸精は不敵な笑みを浮かべ、 「今日はお互い何も出来なかったけど、明日からがほんとの勝負よ。出遅れちゃった分なんてすぐ取り戻すんだから!」 と雪女郎に言った。 「そうだな、今日は出遅れた・・・。」 と雪女郎は狐狸精を横目で見返した。 【ノルウェー・旅のメモ】 空港から市内までの足;エアポート・エクスプレス・トレイン 運賃は170NOK(ノルウェークローネ) 空港から頻発しており便利。 オスロ中央駅からホステルまでの足;オスロ地下鉄 運賃は30NOK エアポート・エクスプレス・トレインと同じく、浩介のような海外旅行初心者でも楽々乗りこなすことが出来る。 改札は日本のように切符を入れなくても通れるシステム。 私とおばさんは妖怪だから切符を買わずに乗車したけど、人間の皆はちゃんと切符を買ってね。 可愛い狐狸精ちゃんからのお願いでした☆
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