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浩介はやっと自分のニヤケ顔に気付いたのか、無理矢理キリっとした顔を作って再び歩きだしたが、少し歩いたところで急にコマの滑りが悪くなった。
「あー、回らねえ!」
そう言って浩介は両手でスーツケースを引きずるようにして、空港の出口へ向かっていった。
その後姿を見つめる雪女郎と狐狸精。
「好きな男をいじめるなんて、Sっ気ありありじゃないのよぉ。」
「お前には負けるわ、ばかダヌキ。」
どんどんと重くなる浩介のコマには、大量の狐の毛と、霜が張り付いていた。
【ノルウェー・旅のメモ】
オスロ・ガーデモエン空港;ノルウェーの首都・オスロの約50KМに位置する国際空港。世界各地から飛行機が発着する。
日本からの直行便はないが、アジア、中東、ヨーロッパでの接続便で簡単にアクセスできる。
黒須浩介(くろす・こうすけ)はアジア系のエアラインで、慣れ親しんだアジア系の映画を機内でたっぷり楽しんだ。
雪女郎(ゆきじょろう)は中東系の航空会社を利用し、途中の経由地の空港ではエキゾチックなアラビアの雰囲気を楽しんだ。
狐狸精(こりせい)は最初自分の足でノルウェーに向かおうとしたが、途中で約束の8月までに間に合いそうにないことに気づき、上海から海上を駆け走って何故か一度日本まで逆走し、そこからヨーロッパ系の便で到着した。搭乗・乗り継ぎ時間はともに短く、初めから飛行機にすれば良かったと思う狐狸精だった。
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