第2章

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悔しそうに言う狐狸精に対して雪女郎が尋ねる。 「助けると言うが一体どうするつもりだったんだ?」 「決まってるじゃない、この尻尾で券売機を叩き壊すのよぉ。そしたらお金は払わなくて済むし、中身の切符は取り出せるし、一石二鳥じゃない?」 ウインクを飛ばしながら立派は尻尾を尻から持ち上げる。 背後から只ならぬ気配を感じ、浩介が振り返る。 自分より後ろの席には誰も座っていない。 「気のせいか・・・。」 また進行方向の方を向き、鞄の中を軽く整理する。 「すぐ使うものはスーツケースからこの鞄に移しておいたはずだから・・・。」 中身をまさぐると、硬くてコロンとした小さなものが指の先に触れた。 「まさか」 指でつまんで取り出すと、それは確かに茶色のキャラメルだった。 「お、親父ぃ・・・。」 呆れてはあっとため息をつく。 よく見ると鞄の底には2、30個のキャラメルが散らばっていた。 「ってことはスーツケースん中にも入れてるんだろうな。」 出発前の父親とのやり取りが思い出される。 ***** 『親父ぃ、こんなもん要らねえよぉ!』 『何言ってるんだ、初めて海外旅行に行くお前には分からんだろうがな、日本ではすぐ買えても向こうでは簡単に手に入らないものもあるんだからな。』 お父さんに任せろと言って、父親は息子のスーツケースに勝手に荷物を詰めていく。 それを力ずくで阻止しようとする浩介だが、頑丈な父親の腕はびくともしない。 『まずはパスポートを紛失した時に必要な、パスポートのコピーと写真2枚のセットだ。』 ・・・(それは分かるけど何も同じもんを10セットも色んなところに入れる必要ねえだろぉぉ・・・) 『それから防寒着だ。夏といってもいきなり大寒波が襲う時もあるからな、マイナス30度、防寒だ。』 ・・・(出発は明日で天気予報はチェック済だし、8月なんだから寒くなってもしれてるよぉ、しかもダウンジャケット3枚って意味分かんねえよぉぉ)・・・ 『それからキャラメル、20箱は必要だ。すぐに補給できて高カロリーだしな。』 ・・・(いつの時代の話だよぉ、食事はレストランとかで済ませるし、おやつにしては多すぎだよおぉ・・・・)・・・
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