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こんなちょっとした言葉でも、あの人からの言葉だと思うと……
(あぁ、これは重症だな)
とくり。とくり。といつもより早いペースで心臓が踊るのだから、私は救いようのないぐらいあの人に惚れているのだろう。
(まぁ、そんなことあの人は気づいていないのだろうけど)
私は再び真っ黒な画面に戻ったスマホを見て、目を細める。先ほどのメッセージが送られて1時間が経ったと思っていたが、実際は10分ほどしか経っていなかった。
(……返信、しちゃおうかな)
私はスマホに手を伸ばし、あと数センチのところで思い留まった。しかし迷ったのも束の間、私はスマホを手に取りあの人に返信する。
『お久しぶりです!元気、と言いたいんですが勉強で頭がパンクしてます(汗』
『先輩は元気ですかー?』
当たり障りのない、ただの後輩が先輩に送るような文体だ。これなら、この気持ちが察されることはないだろう。私は送ったことを確認して、スマホの電源を切る。そして、ゆっくり大きく深呼吸をする。
(いつか…この想いがあの人に届けば良い)
(この恋が実らなくても、想いだけは伝えたい)
私は自身の胸に手を当てる。顔の筋肉が勝手に緩むのが分かる。私はまた、はたから見たら変人なんだろうな、と思い苦笑いをした。
(あ、きた)
スマホが光り、メッセージが届いたことを知らせる。送信者はやっぱりあの人。それだけでまた、心臓が……。
(っ……ダメだ、勉強勉強)
私はそっとスマホの画面を下向きにし、教科書と睨めっこを再開する。 しかし、どうもあの人からのメッセージは集中力を奪う力があるらしい。私はチラチラとスマホを見て、そっと手に取った。
『俺もw知恵熱出そうww』
『そう言えばさ。あれ、どうなった?』
電源を入れると同時に浮かび上がる、メッセージ。 こんな短い文章で有頂天になっているから、本当困ったものだ。
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