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―――かわって、二階の最奥の部屋。
ここはこの店でたった一つのVIP専用部屋だった。
まずはドアから違う。黒塗りされたドアの両サイドには金メッキ燭台。
中に入れば、熱砂の砂漠国の王族と寵姫が過ごす様な、レースカーテンと円型ベッド。
俗に言う、やりすぎたラブホの一室。
ベッドルームには、麝香が炊かれているらしく、むせ返るような桃色煙が充満していて。
下ろされたカーテンには影が二つ。
しなやかそうな指先が、ピアスをなぞっていた。
「…きになる?」
上目遣いで金髪の女がのしかかった男に聞いた。
「いや…アメジストか。
あなたの瞳には紫が良く似合う」
対して、横になった男が女に返答すれば、女は娘のようにはしゃいだ。
乳白色の艶やかな肌が、笑うたびに揺れて。
「うまいこといって…旅のお人は危険だわ」
「貴女こそ…一目見たそのときから、私を危険な恋路へと誘った――…こんなにもいとしいと思う感情が、あったなんて…」
細身の指先が、金髪を掻き揚げてまじまじとその容姿を堪能して。どうじに見つめる男の眉目秀麗さには、まったく追いついては来ないのだが…その頬を引き寄せて、細身の首元に唇を馳せ、胸元へ流れ落ち、瞼を閉じれば。
「セルシュ様!!!!!
お時間です!!!!!」
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