プロローグ

6/11
前へ
/13ページ
次へ
「…早っ」 あんぐりとしてヴェド、と先ほど呼ばれた子供はそうつぶやいた。 「早とかいうな。町場の女はあんなもんだ」 舌打ちして、セルシュはどうせなら町3つ4つつれて歩ける娘をひっかければよかったと吐き出してみる。 「馬鹿なこと言ってないで、さっさと服着てくださいよ!  まったく…時期王であろうおかたがこんなんじゃ、僕過労と心配で早死にしてしまいますっ」 きゃんきゃん喚くヴェドに、セルシュがやさしく頭をなでると。 「可愛い眷族にそこまで思われるとは…俺もまだまだ捨てたものではないな」 きれいな微笑に、ヴェドが見惚れて一黙すれば。 「ま、またそんな事いって!!!  もうセルシュ様のペースにはだまされませんからねっ!!!!」 またもや舌打ちするセルシュだった。 「旅の者がいるってのは―ここかァ」 聞きなれないしゃがれた声が戸の向こうから覗いていた。 ベキベキと音をたてながら、おまけに黒塗りの戸を剥ぎ出す。 …先ほどいた女が言っていた、アーチャーなる肉団子―もとい、スキンヘッドの賊のボスだ。 よくもまぁあの細道の階段を通れたなぁと思いながら、いまだ上裸のセルシュと、見まがえるヴェド。 アーチャーと呼ばれる肉団子は、セルシュを見た途端に何か察したらしく。 「お前かァァ、俺の女を横取りしたのはァァァ!!!」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加