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ミュージックアルバムは25歳のサラブレッドだ
人間でいえばもう100歳
みんなからばあちゃんて呼ばれる
歩くのも遅いし食べるのも遅い
背中もくぼんで足もむくれて
体力もないすぐばてる
どっからどう見てもお年寄りだ
お世辞にも馬独特の造形美はもうない
でも愛らしいので僕の一番好きな馬
とりあえずここは譲れない
去年の初夏バテバテの彼女を見て
担当の先生が
今年の夏は越せるまいと言っていた
正直同感だった
実際暑さにやられた馬もいたし
代謝のなさから毛も抜けない汗もかけない彼女は
どう考えても夏に適性がなかったのだ
ところが彼女はなんだかんだと猛暑を乗り越えた
気が付けば涼しい季節になっていた
耐えましたね、と僕は先生に言ったら
先生は今年もかと
わかっていたとでもいいたげだった
5年前から毎年言われていたそうだ
熱くなりはじめる度に必ず同じ事を
そしてやはり乗り越える
先生は言う
一種のフラグ立てなのだと
今年は持たない、そういっていれば
また今年も生き延びたな、というオチが帰ってくる
大切なジンクスなのだと
おざなりにされてるようで
大切に扱われているミュージックアルバム
愛情の篭った諦めのことば
なら今年は俺が言ってやろう
今年の夏も越えてほしいから
『さすがに今年の夏は越えられまい』と
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