Lycoris -水底(みなぞこ)に沈めた華-

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『俺は、あなたの秘密を知っている。  赤椿、あなたが鈴見綾のために、この秘密を抱えていることも』  あの時、掃除人に囲まれても、長谷久那は腕の中に庇った赤谷沙希を離さなかった。 『そして片付け者になった者でも、それ以上の価値を『リコリス』が見出せば……片付ける以上に生かす価値があるとみなせば、片付け者に指定された者でも、生き延びることが許されることも、俺は知っている』  それどころか目の前に立った龍樹を鋭く見据え、取引に応じろと脅してきた。 『遠宮龍樹、あなたは言った。  違う形で関わっていたら、是非とも リコリス にその腕が欲しいと』  自分が『リコリス』専属の情報処理官になる。  だから赤谷沙希を片付け者リストから外せ。  外さないというのであれば、遠宮龍樹の秘密を公にさらしてやる。  遠宮龍樹がたった一人の女(ヒト)のためにひた隠してきた秘密を。  その代わり、赤谷沙希を片付け者リストから外し、この先も身の安全を保証すると言うのであれば、自分は『リコリス』に隷属する。  赤谷沙希がその意思の下に自由に生きている限り、離反も抵抗もしない。 「……俺がもっと出世したら、赤谷沙希の価値は上がりますか?」  長谷久那は、自身の人質として赤谷沙希を『リコリス』に差し出すことで、赤谷沙希を生かした。 「上がるだろうな」  沙烏の先読みは『予言』と呼ばれ、『リコリス』内ではその予言は絶対に外れないものとして扱われている。 「赤椿、個人的な興味から、一つ訊いてもいいですか?」  その予言者が、ふいに口を開いた。 「あなたはなぜ、『赤椿』という実働部隊最高クラスの肩書きがあることを鈴見綾に伏せ、まるで鈴見綾と同格の掃除人であるかのように振る舞っているのですか?」  未来を視透かす沙烏には、分からないことなど何もないと言われている。  だがその青年が今、龍樹に向かって問いを口にしていた。
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