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「感情よりも理性を優先させるっていうのはね、ごく普通の、恋する女子高生にはとても難しいことなのよ」
宿っているのは、哀れみか、同情か。
「長谷久那、確かにお前の未来視は、恐ろしいくらい精確だ。
そんなお前の欠点をあえて挙げるのであれば……」
対して、久那を挟んで鈴見綾と対面するように立つ遠宮龍樹の瞳に、感情というものは一切ない。
「好意的な感情に疎い。
だから、その好意から起きる行動に対する予測が甘い」
その瞳が、わずかに動く。
「しかしお前、本当に有能なんだな。
『リコリス』の『黒』側が泣いていたぞ。
お前達の行動範囲圏にある監視カメラは、全て機能停止。
やっと学校に向かっていると割り出しても、人目のある場所から外れないから力尽くで拉致するわけにもいかない。
無線も妨害されて、本部と俺達は連絡がつかない。
おかげで俺達の苦労が増えた」
遠宮龍樹の視線の先には、エレベーターの扉があった。
『リコリス』の権限で貸し切りにされているのか、今までそのエレベーターの表示が一階から動くことはなかった。
だが今、その表示がゆっくりと動いている。
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