第1章

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「なんかまずいか?」  一人考え込むマコトをハルキは再び不思議そうに見つめている。 「いや写させてもらうのはやっぱり駄目だよ」  あくまでキモトの情報源を特定して、自分たちもそれを利用させてもらうという形にしなければ駄目だ。そう力説するマコトをやはりハルキは不思議そうに見ていた。 「それって直接自由研究見せてもらうのとなにか違うのか?」  ガツンと殴られたような衝撃がマコトに走った。  確かに同じことかもしれない。初めはハルキの間違いを、歪んだ発想を正さねばと思っていたが、ハルキの純粋な問いにマコトの心は揺らいだ。  きっとキモトは得た情報を完璧にまとめあげ、立派に完成させるだろう。そのキモトの研究はもはや情報源と呼んでも差支えがないのではないか。  おまけにキモトはもう隣の小学校に通う子供だ。面識のほとんどないマコトにとっては、ただの知り合いだ。知り合いに「かがみ様」について詳しく調べている人がいるので、その人に取材をさせてもらったと言い換えれば別に問題はない気もする。  むしろこっそり情報源を探り、盗み見するような自分の考えこそ歪んでいたのではなかろうか。  友達に宿題を見せてもらうという方がよっぽど純粋に聞こえる。  ハルキに目をやると、やはり心底不思議そうな顔をしていた。  ハルキはきっと、マコトを動揺させ楽な方へ引っ張るためにこんな質問をしたのではない。純粋に疑問に思っただけなのだ。  間違っているのは、歪んでいるのはやはり自分なのか。  だが、しかし、それでもマコトは研究を見せてもらうことはできないと確信していた。今のやりとりでわかった。 「そもそもキモトは自由研究を見せてくれるのかな?」 「あっ無理かも」
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