第1章

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「とりあえず行ってみようぜ」  ハルキは明らかなつくり笑いでそう言った。 「そ、そうだね」  とても笑える精神状態ではなかったが、マコトも精いっぱいの笑顔でそう返す。  前向きに考えよう。見渡しは利きづらいが、あまり入り組んだ道にはなっていない。二人がどこかの建物に入ったわけでないのなら、走って探せばきっとすぐ見つかるはずだ。  脇道には目を通すだけにし、一番大きくなっている道をいくらか進んだが、しかし二人は見つからなかった。 「この先はずっとまっすぐ道が続いてるけど、二人はいないっぽいな」  ハルキは背伸びをしながら前を探っている。マコトからも確かに人影は見当たらなかった。 「とすると、どこかで脇道に入ったってことか」  これはお手上げかもしれない。しかしそう考えながらもマコトは安堵した。これできっぱりとあきらめもつく。  結局遅くなって親に怒られてしまうだけだが、それよりもここからはやく帰りたいという気持ちの方が強くなってしまっている。  見たところハルキもこれ以上進む気はないようだ。 「帰ろうか」  独り言のようにそう呟き、来た道を振り返ったマコトの視界の端にチラリと黒い影が映った。 「あっ」 「ん、どした?」 「いや、今そこの路地裏になにか入っていたような気が……」  ここからでは入り口しか見えない。首をひねって覗き込むが、やはり手前までしか見ることができなかった。  怖い。マコトは一気に体が冷えるのを感じた。  人影を探していたはずなのに、いざ何かの気配を感じると怖くなってしまった。  というか、これはおかしくないか?  だって……。 「どうする?」  マコトはハルキを振り返りながら訪ねる。マコトはこういう時に決断することが苦手だった。ついハルキのような決断力のある人を頼ってしまう。 「どうするって……」  少し間を置いて、行くしかないだろと自分に言い聞かせるようにハルキは答えた。  正直あまり気は進まない。自分で判断することは躊躇ったが、心の中では帰りたいという気持ちの方が大きかった。ハルキが帰ろうと言ってくれることを期待してしまっていた。  しかし自分がハルキに委ねたのだ。ハルキの決定は自分の決定である。マコトも自分に言い聞かせ、すでに脇道へと向かっているハルキの後を追った。
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