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階段を上っていると、もうほとんど沈みかけの太陽がちらりと見えた。あたたかい日差しが顔にあたる。
「あのさ」
暗い路地裏を抜け日の光を見たことで安心してしまったのか、マコトはつい言わないようにしていた言葉を口にしてしまった。
何かの影を見たときからずっと考えていたこと。いや、なるべく考えないように必死に頭の中から追い出していたこと。
「この路地裏ってさ、俺たちが来た方にあったよね。おかしくない?だって俺たちはキモト達を追いかけてたんだからさ。キモト達を見つけるんだとしたら……」
前にいるはずなのだ。どこかで追い抜いてでもいない限り、自分たちの後ろにキモト達がいるはずがない。
いや、もっと根本的な話。あれがキモト達だったかどうかなんて話じゃない。もっとシンプルでどうしようもない疑問がある。だって……。
「あの時俺らの後ろに誰かいた?」
ハルキが階段を上る足を止めた。
それが答えだった。
いなかったのだ。ハルキも人を見ていない。
自分もハルキも辺りを見渡しながら進んでいたのだから、見落とすはずがない。簡単にだが、路地裏にもすべて目を通した。直接後ろを振り向いて目を凝らしたわけではないが、視界の端には何度も後方が映っていたはずだ。
自分たちが通り過ぎた後、どこかの建物から出てきた人か?しかし人が近くにいるような気配はなかった。誰もいないから余計にわかる。静かで、誰かが歩いているような様子はなかった。
それにあんな路地裏を抜けて、この階段を上ってどこへ行くというのだ。
キモト達だからこそ、都市伝説を求めこの先へ進む意味が分かる。ならばキモト達ではなかったら、誰がなんのためにこの先を目指すのだ。
あの影は一体なんだったのだ。
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