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「うっわ!びっくりしたあ」
何かが顔を出すと同時に、驚いた声を上げた。
その声でマコトは思わず叫びそうになったが、寸でのところで踏みとどまった。踏みとどまることができたのは、その声が恐ろしいものではなく、明らかに女の子の声だったからである。
しかし体はしっかりと飛び上がり、階段を踏み外して転げ落ちそうになってしまった。
一方ハルキは動揺することなく声の主を見上げていた。
「なんだよ、やっぱりお前かよ……」
ハルキは安心したような声を漏らす。
その言葉でハッとし、マコトもようやく声の主の正体に気が付いた。
――キモトサトミだ。
階段の先から顔を出したのは自分たちの追いかけていたキモトサトミであった。
キモトの後ろからもう一人、きょとんとした顔の女の子が顔を覗かせた。
「サトミちゃん、誰かいるの?」
その女の子はマコトとハルキを見つけると驚いたように一歩下がり、再び視界から消えた。
「あっ誰かと思えば春喜じゃん!何してんのこんなとこで」
キモトもハルキに気付いたようだ。どうやらこんな状況でもパッと名前が出て、気さくに話しかけられるほどには仲がよかったらしい。
「ていうか、やっぱりって何よ。アタシがここにいるの知ってたわけ?」
キモトは責めるというよりも楽しそうな顔でハルキを問い詰めている。ハルキのキモトはオタク発言で暗いキャラを想像していたが、どうも正反対の性格のようだ。
「そいえばそっちの子も見たことあるなあ。いっつもあんたと遊んでた、ええっと」
どうやらマコトのことを言っているらしい。話があっちへこっちへと忙しい女の子だった。ハルキと似ているかもしれない。
マコトだよとハルキが笑いながら紹介する。
先ほどまで張りつめていた緊張した空気は、キモトのおかげでもうすっかりなくなってしまった。
「おーいカナちゃん、大丈夫だよ。この二人は前の小学校の友達」
キモトが後ろに向かって呼びかけると、少しの間の後、先ほど隠れた子が恐る恐る顔を出した。
「いやーそんな後ろまで逃げなくっても」
キモトがそういうと女の子は恥ずかしそうに顔を赤らめる。
自分も含め、ここにいる三人とも完全にキモトのペースに巻き込まれていた。
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