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18時。夏になり長くなった日も傾き始め、辺りは夕暮れ色に染まっていた。
気がつけば刺すような強い暑さから、ベッタリとまとわりつくような夕暮れの暑さへと変わっていた。
「もうこんな時間だよハルキ。帰らないと」
マコトは腕に巻いた時計を見ながら、前を歩くハルキに声をかける。
しかし返事はない。代わりに、疲れと怒りのこもった大きな溜息が吐き出された。
「帰らないなら俺一人で帰るからな」
ハルキの気持ちもわかるが、それを自分にぶつけられるのは堪ったもんじゃない。
イライラしてるのは自分も同じなのだ。
やはり返事はない。しかし明らかに歩みが鈍くなっている。
これは、自分では退くに退けないから上手く説得してくれという無言のアピールなのだろう。
いつもならば適当な言葉を並べて説得まがいのことをしてやるのだが、しかし今のマコトにはその気遣いをしてやるだけの体力と心の余裕がなかった。
帰ることすら億劫で、言葉とは裏腹に結局ハルキの後ろをだらだらと付いて行くだけだった。
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