第1章

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 そもそもの発端は友達のナオであった。  マコトとハルキと同じ6年1組の生徒であり、またリーダー的存在でもあるナオの一言から始まった。 「夏休みの自由研究は『かがみ様』について調べる」  マコトやハルキを含むいつものメンバーを召集した上でそう言ってのけたのだった。  本当にこの一言だけであったのだが、マコトにはこの言葉がただの宣言ではなく、一緒にやろうという意味を含んだものだとすぐに理解できた。  要するに、みんなで調べるぞという命令である。  自分で言うのもなんだが、マコトは自分達のグループがマコトも含めて頭の切れる方ではないと理解していた。ハッキリ言ってお馬鹿の集まりである。  この自由研究も恐らくは、とても研究と呼べる代物にはならないだろうと踏んでいた。  そしてその予想はやはり的中してしまうのだった。  基本的に勉強より運動を優先するマコト達の中でも、特に賢さのステータスを全て好奇心と体力に振ってしまったようなナオには、この自由研究の明確なビジョンはおろか、簡単な計画すらなかったようだ。  結局誰一人自分たちがなにをしているのかわからないまま、ただ「かがみ様」を探して暑い中歩き回り、夏休みを浪費していくのであった。  体力には自信があったが、マコトにとって、いや恐らくメンバー全員にとって、この空回りするような不完全燃焼感はダメージが大きかった。  なんの成果もないこの無駄なお散歩は、今日で丸5日目となる。  ストレスは限界に達していた。
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