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キモトサトミ……?
顔はほとんど思い出せないが、確かにそんな子がいたかもしれない。
「あーそういえば居たかもね。あんまり覚えてないけど」
「おいおい居たかもじゃなくて居たんだよ」
ハルキは覚えていないという台詞に少し驚いたような顔をする。その行為がマコトを苛つかせた。
「知らないよ、一度も同じクラスになったこともない女子なんて。そんなのどうだっていいからさぁ!」
早く帰ろう、と続けようとしたマコトの言葉を再び遮り「まあ落ち着けよ」と呟いた。
それはこちらの台詞である。先程まで、いや今でも頬を軽く紅潮させ息を荒げている奴はどこのどいつだ。
そもそも自分がイライラしてるのは誰のせいだと――。
そこまで考えてマコトは冷静さを取り戻した。自分が苛ついているのはハルキのせいなどではなくナオのせいであろう。
いや、きっとアホなことだと理解していながらナオの提案を断ることも具体的な案を出すことも出来ず、ただ感情を溜め込んでいる自分に苛ついているのだ。
誰のせいだというならば自分のせいだ。
マコトはフーッと肺に溜まった空気を吐き出した。怒っていた肩が落ち着いた。
目の前にいるハルキが悪いわけじゃないと思うと、多少心が晴れた気がする。
「落ち着いたか?悪い悪い、俺もついテンション上がっちゃって」
ハルキは申し訳なさそうに笑いながらそういった。
素直に謝るハルキにマコトも申し訳なさを感じてしまう。ハルキのこういうところはすごいと思うし、尊敬できる。
「いやまあいいからさ、ところでそのキモトがどうしたの?」
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