第1章

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 ハルキは待ってましたとばかりに目を輝かせる。 「実はな木本ってすっごいオタクなんだよ!」 「うん?」  話が見えない。なぜキモトがオタクであることがそんなに興奮するようなポイントなのであろう。 「あ!いや違うんだ。オタクってんじゃなくて、いやオタクなんだけど、『かがみ様』オタクなんだよ。筋金入りの!」  決してわかりやすい補足ではなかったが、マコトにもようやく話の筋が見えてきた。  筋金入りという言葉をやたら強調したあたり、恐らく相当なエピソードがあるに違いない。マコトはここからうまい具合に、説明が下手なハルキの話の導線になってやらなければならない。いつものことだ。 「なんでキモトが『かがみ様』オタクだなんてこと知ってるの?」 「あいつな、夏休みの自由研究で……あっ夏休みって三年と四年の頃のな。その三年と四年の夏休みの自由研究で、俺あいつと同じクラスだったんだけど、二年連続『かがみ様』について調べてきたんだよ」  去年、マコトとハルキは別クラスだった。どうやらその時ハルキはキモトと同じクラスだったらしい。 「でも二年連続で同じ課題を出すってそれただのサボりなんじゃないの?」 「そうそう!普通はそうなるんだけどさ、二つとも内容がすっごい詳しく書かれてて、先生も最初はなんだこれって感じだったんだけど中身見て感心してさ、今まで見た『かがみ様』の自由研究で一番の出来かもって」  なるほどなるほど。ハルキは同じように今年の夏休みも、つまりちょうど今現在もキモトが「かがみ様」について調べている最中だろうと考えているのだ。  うまくいけばキモトの情報源、それが人であれ本であれ、そういったものにたどり着けるかもしれないということだろう。
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