第1章

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札幌の発寒川の里に とうとうと名づけた店がある 十年の歳月に亘り心を和ませ 新たの出会いを生む カウンターの二つ目の いつもの指定席 専用のカップで新聞を読みながら 飲むコーヒーの美味さ タバコに火をつけて今日もまた 一日が終わるのか シャッターを下ろしたままの月曜日 あてどなく街をさすらい タバコだけを買って家路を行く 昼はカフェ、夜はスナック 六時を境に彩を変えて行く 姉から妹に引き継がれ 新たな十年へ再び旅を重ねる 春には春の、夏には夏の 秋には秋の、冬には冬の 春の黄昏に店は 夜のスナックに衣替え 夏の陽射しにドアは開け放たれ 秋の終わり近づく頃暖房を恋しがり 冬の日暮にとうとうと雪灯りともり スナックの喧騒が明け方まで続く 疲れた顔を見せず 満遍なく愛想を振りまき 積み重ねた歳月が 看板の重みを増していく 幸から愛へ告がれるバトン とうとうと流れる風に揺れて とうとうとそびえたつ 澪標に支えられ とうとうと流れる歳月 いざ、いかん
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