第1章

2/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 閉会式を終え、皆が帰路に就く頃。  僕は体育祭の成功を祝った打ち上げとやらに参加して、バスで十分程のカラオケボックスに来ていた。  本当は断ろうと思っていたのだけれど、僕が見ることのできなかった佐々さんの武勇伝を話してくれるというので、のこのこ付いてきたのだ。 「本当にすごかったんだから! えーっと……どこまでいたんだっけ? リレーとか騎馬戦とかの辺りは?」 「見た見た。僕が見てないのは組体操のところだけだよ」 「そう! あそこね、彼方に変わっててっぺんになったじゃない? 先生とかも失敗覚悟で、怪我さえしなければいい的なスタンスだったんだけど、佐々さんすごい完璧なピラミッドを作り上げちゃって……」 「完璧なピラミッド? ……写真とか、ないの?」 「あるある。親が撮ってくれたやつが……えっと……」  そう言ってデジカメを操作し始めたので、横から顔を出す。  ピッピッピ、という音と共にスライドしていく写真を見ると、それらしき場面へと移り変わっていく。組体操のゾーンになり少し行くと、ああ、これ、と友達が声を上げる。  覗き込むと、深刻な手ブレである。  うーん……ちょっと、これじゃ分からないかも。 「……なんか、もっとないの?」 「ああ、うん。何枚か撮ってるから……」  そう言ってスライドさせた二枚目。  今度はくっきり映ってるけど、肝心のてっぺんの部分が指で隠れている。 「……もっと他のは?」 「大丈夫、まだあるはず……」  三枚目。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!