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それから、毎日のようにネメシアはケントの部屋を訪れるようになった。
不健康に三食と風呂以外は一日中、部屋に閉じこもっているケントの元に、ネメシアは夕飯を食べて風呂に入った後から深夜まで、入り浸る。それが毎日だ。
しかし、別にケントとて嫌な訳ではない。
工科大の情報科に属するケントは、女という生物と接触する機会が非常に少ないのだ。
第二次産業の女性からの不人気さは未だに変え難く、電子工作研究会というまたまた女っ気の無いサークルに入っているケントの大学生活は、たまに誘われる合コン以外灰色一色である。
そんな中にネメシアからの頼みだ。女性との交流が少ないケントにとっては、天の恵みである。
例え妹に「手ぇ出すなよ」と釘を刺されて出せなかろうと、正直なところ「こんな美人と触れ合えるだけで心の保養だ!!」なんて気分でやっている。
……毎回のように風呂上がりの姿でやってくるので、下半身を抑え込むのが少しだけ苦痛ではあるのだが。
「ケント、ここってその資料と記述が違いますよね。何故ですか?」
「ああ。これね」
ある時、向かい合ってケントの音読を聞いていたネメシアがケントに疑問を投げかけた。
ケントは傍らにあったもう一つを手に取り、説明する。
「こっちは『古事記』。で、こっちは『日本書紀』。ちなみにどっちも題名は原典まんま」
「違う資料ですが、内容が非常に似通っていますね」
「そうだな。明らかに違う書物なのに、出てくる神様も細部は違うけど大体一緒だし」
「どちらが原典なんですか?」
「分からない」
ケントはパラパラと無意味にページをめくる。
イザナギ、イザナミ、アマテラス、ツクヨミ、スサノオ。ゲームや漫画にも登場する人気の神々だ。
「どちらも、本来は神話というより歴史書として扱われていたもので、どちらが先かは明らかになってない」
「何故、2冊に別れているんですか?」
「読ませる対象が違うから、かな。『古事記』は国内向けで、『日本書紀』は外国……まぁ、中国かな。そっち向けになってる」
「興味深いですね」
「そう?」
「はい。どちらも、もう少し学んでみたいです」
「はいはい」
あまりにも真剣なその瞳に、ケントは苦笑する。
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