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──  結局のところ、ネメシアはケントの助けなど一切借りず、サイトに載っていた神話を全て読み切った。  疲れたのか、背もたれに寄りかかって息を吐く。 「どうだった?」 「興味深いお話でした」  完全に学者の顔で返答される。 「そういえば、ケントには研究のお手伝いしてもらっておきながら、私の研究内容については全く説明していませんでしたね」 「……そういえば、そうだな。ネメシアって何の研究をしているんだ?」  世界各国の神話について調べていることは知っているが、研究内容としてそれでは少しお粗末だ。  大学院生活が終わる前に、研究が終わるとはとても思えない。 「私が調べているのは神話……特にホピ族の神話と各国神話の関連性について調べています」 「ホピ族?」 「はい。マヤ文明の末裔とされる部族で、私にもその血が四分の一だけ流れています」 「ああ、だから……」  それを聞いて、ケントは合点する。ネメシアの褐色の肌は、アフリカ系アメリカ人にしては結構薄い。出自はネイティブアメリカンだったのだ。 「日本の神話には、ホピ族の神話と似通った点があると聞いて、私は日本にやってきたんです」 「それで、収穫は?」 「ありました。確か、ネットにも簡単な神話の内容が書かれていたはずでけども……見ますか?」 「……そうだな。せっかくだし」  プロ一歩手前の人物が進めるものだ。せっかくだから見ておこう、と。ネメシアにパソコンの操作権を譲ったままにしておいたのがいけなかったのかもしれない。 「あっ……」  広告料稼ぎの為か、端っこの方にあったリンクを、ネメシアがクリックしてしまう。 「えっ、ちょっ……!?」 「え? あれ!?」  慌てたのか、何故かカチカチッとさらに左クリックを押し込むネメシア。  あまりこの手の機械の扱いが得意でないのか。  そして現れる怪しいサイト。左クリック連打で、最早どこに飛ばされたのか確認さえもままならない。  ただ、確実にメモリ内から何らかのデータが持っていかれたのをケントは直感した。    さらには、こちら側に何らかのデータを送りまでしてくる。完全に犯罪行為だ。 「ケ、ケント……! なんかダウンロードが始まっちゃいました!」 「何をやってるんだ、お前は……!? ちょっと貸せ」
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