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 ネメシアからマウスを引ったくり、机の引き出しから白い半透明のケースを取り出し、開ける。  中に入っているのは、USBだ。ケントが自作した特別製である。  それをポートに突き刺す。すると、データの読み込みを表すランプが数回点滅し、画面が硬直した。 そして、次の瞬間。ダウンロードの進み具合を表す%表示の数値が逆再生を開始する。 「ケ、ケント、これは?」  恐らく見たことの無いであろう現象を目の当たりにしたネメシアは、困惑したように目をみはる。 「コンピュータウィルス。自分のパソコンをワザと感染させた」  質問に対しては、端的にシンプルに起こったことだけ述べる。 「……さて、この俺にケンカふっかけたからには覚悟しろよ」  パキキ、と指を鳴らすケントにネメシアはビクッと怯えた表情を見せるが、すぐにこのサイトの管理者に向けてであろう言葉であることを察する。  ケントによって故意にウィルスを感染させられたCPUがノイズ混じりに画面の表示を変える。  画面の挙動が落ち着いた時、そこには無駄な物が一切省かれ、二つの枠だけが残された。  シンメトリーに左右一つずつ存在する枠のうち、右側に高速で文字が流れていく。と、それを見たケントがおもむろにキーボードを叩いた。  左側の枠に、キー毎に設定したコードが打ち込まれ、瞬く間に百十数行のプログラムが構成される。
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