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「……終わりですか?」
「いや、分からない」
真剣な表情で背後から画面を見ていたネメシアが聞き、ケントが答える。
相手のCPUの活動内容を表す文字列は流れ始めない。しかし、二度も復帰されたことを考えると、このくらいで終わるとは考えにくい。長丁場になる予想だ。
しかし、その予想は次の瞬間崩れ去ることになる。
何故なら、ケントの開いていたアプリが突然、強制終了させられたからである。
「なっ……!?」
思わず、驚きが喉から飛び出る。
そしてケントが何らかのアクションを起こす暇も与えず、初期設定である爽やかな草原画像の画面の中央にウィンドウが開き、文字が出力されていく。
『驚かせて済まない。だが安心してくれ。私には君達を攻撃する意思は無い』
と同時、ダウンロードのゲージが現れ、なす術も無くケントのパソコンにデータがインストールされていく。
ケントはといえば、反撃の予兆も感じさせずにこちらへの攻撃を成功させた相手への驚きで呆然としている。
『非常に申し訳ないのだが私に残っている時間はあと僅かしか無い。要件を簡潔に言わせて貰う』
ケントの背後のネメシアが食い入るように画面を見つめている。
静寂に包まれた部屋の中、画面の中の文字だけが動く。
『世界を救ってくれ』
「世界を……救う?」
ケントが呟くと同時、インストールが完了し、ファイルが一つ表示された。
『詳しい事はこのファイルの中に記されている。どうか私の代わりにこの計画を止めてくれ』
そこで一度、文字が止まる。
マウスカーソルが勝手に動き、インストールされたファイルをクリックする。
二つ目のウィンドウが開かれ、文書ファイルの内容が表示された。
そして最後に、これだけが書き残された。
『PS.君は良い腕をしている。将来、凄腕のハッカーになれるだろう』
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