第1章

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うちのマンションの近くにある和食レストランでヨシと待ち合わせをした。 ヨシと会うのは1週間ぶりだった。 レストランに着いたらすでにヨシがそこで待っていて、 駐車場の入口付近にあるレンガ調の石のへりに腰をおろしていた。 「ヨシ、早かったね」 「ミユキ……」 ヨシが私を見るなり、哀れむような表情をして、言葉を失っていた。 「やっぱりまた痩せてんじゃん……」 「…………」 ヨシは立ち上がると、私の肩に手をおいて擦った。 「誰かが管理していないとダメだな、ミユキは」 深く息をついて、「とりあえず、中に入るか」と手を背中に回して、促す様に優しく押した。 レストランの中に入りテーブルに案内される。 そして改めてヨシが私をまじまじと私を見ながら言った。 「ミユキが母親になるのか……。信じられないな」 「私も信じられないよ。まだエコー見ても赤ちゃんの形もしてないの」 エコーで見た、リューマと私の赤ちゃんの姿を思い出して、無意識に顔が綻んだ。 私たちは料理を注文すると、 リューマとの赤ちゃんの話で盛り上がった。 「リューマの子供だったらチャラいのもしっかり受け継ぐんだろうな」 「なにそれ。女の子かもしれないじゃん」 「女の子だったら、ミユキに似るのかな。頑固なところとか」 「私、頑固じゃないですー。しっかり者と言って」 「しっかりしてないだろ。自己管理できないでそんなに痩せちゃってんだから」 「つわりがあるからしょうがないんだよ。胃がムカムカして、吐き気がするの。 まさか、つわりだとは思わなかったんだけど、妊娠してるって分かって、納得した」 料理が運ばれてきて 私は注文した冷やしうどんを口に運んだ。 気持ち悪くならずになんとか食べられた。 「ミユキ……」 ヨシが海鮮丼を口に運びながら、視線を合わせずに私の名を呼んだ。 「……?……なに……?」 「リューマが帰ってこなかったら……ミユキどうするの?」 「どうするのって……」 「1人で育てんの?」 「うん。もちろん。そうするしか他ないし……」 「…………」 ヨシはしばらく黙り込むと 海鮮丼を食べるのを辞めて箸を置いた。 そしてまっすぐ私を見据える。 「オレがその子の父親になりたいって言ったら……?」
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