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「もう!今行く!」
華子はスマホを耳にあてたまま、
かばんを肩にかける。
片手で私と恵麻にごめん、
のジェスチャーをしながら出口へ走り出す。
華子の通ったあとはいつも、
いいにおいがする。
きっとあの背中まであるつやつやの長い黒髪を洗っている
シャンプーとコンディショナーの香りだろう。
恵麻は残りのクロワッサンをほおばりながらもごもご言っている。
私はテーブルに開いて置いたままの
赤い表紙の「パース!」と書かれた本に目を落とした。
絵を描くなら知っておかなければと、
最近、パースの勉強をしている。
変な夢を見たのはこの難しい本のせいかもしれない。
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