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六 過去の事件
『新婚なんだから、奥山温泉に着いたらサスケと散策してのんびり温泉に入ろうと思っていたのに雨と事件だ。事故じゃない。どう見たって事件だ。天気予報は明日から二日間雨の予報だ。これで一週間の休暇がオジャンだ。無くなったのも同じだ・・・』
真理がこの奥山館に到着するまでを思いだしていると、
「あったよ・・・」
佐介がタブレットパソコンで山田勇作に関する興味ある情報を見つけた。
部屋には佐伯もいる。佐伯はタブレットパソコンで県警本部の情報網から山田勇作を調べている。伯父さんはこうした行動を、私たち民間人の前では見せていけないはずだ。私たちを信頼してるのだろう・・・。それとも、私たちの情報を当てにしてるのだろうか・・・。真理がそう思っていると佐介が見つけた情報を読みあげた。、
「いいかい。読むよ・・・。
『山田勇作。二〇二一年現在、三十五歳。『借金未返済殺人事件』加害者。
二〇〇六年。
二十歳の時。福原富代、関口虎雄とともに、同郷の宗谷慎司を殺害。『奥山事件』の原因となる。
『借金未返済殺人事件』概要。
二〇〇五年。
同郷の山田勇作、福原富代、関口虎雄の三人の学生十九歳が、同郷の宗谷慎司十九才から借金した。
翌年、二〇〇六年。
三人は宗谷慎司に借金を返済せず、二十歳になった三人は、宗谷慎司を居酒屋に呼びだして泥酔させて気絶させ、故郷の山中に生き埋めにして殺害した。
宗谷慎司の勤務先の経営者は、行方不明の宗谷慎司の捜索願いを警察に提出した。
居酒屋窃盗事件の捜査で捜査中の警察により、防犯カメラの映像にあった宗谷慎司と三人の客から、加害者三人が捕まった。三人の自供により宗谷慎司の遺体は奥山村の山中から掘りだされた。
二〇〇七年。
裁判で、加害者は懲役十五年の実刑になった。
山田勇作をはじめ、福原富代、関口虎雄は十五年の懲役に服すが、三人とも模範囚として刑期十年で出所。
その後、山田勇作は某イベント企画会社で社会復帰し、現在に至る。
現時点で当該者が他企業へ移動した情報は無い。当該企業は犯罪者の社会復帰に貢献する企業として知られている。
『奥山事件』概要。
宗谷慎司が殺害された『借金未返済殺人事件』の結果、加害者三人の実家は地元の人々から村八分にされた。
二〇〇七年。
『借金未返済殺人事件』翌年。関口虎雄の家族と山田勇作の家族が地元を離れた。
最後に福原富代の家族が地元を離れた夜、福原富代の弟政則が、殺害された宗谷慎司の家族九人を惨殺し、政則は自殺した。
宗谷慎司の家族七人の遺体が見つかったが、子供二人の遺体は行方不明になった。
その後、地元は過疎化して誰も住まなくなり、墓だけが残った』
「借金は多額なんか？」
佐介が情報を読み終えると真理は佐介を見つめた。真理は郷里の群馬訛りのままだ。今時は群馬の地元住民でも真理のような昔の訛りを話す者はいない。真理は訛りの方が話しやすいと思っている。
タブレットパソコンを見ながら佐介がいう。
「三人が借りた総額が百万なんだ・・・」
「そんだけで殺人か？」
真理は驚いた。
「大学一年の後期分の授業料を払うため、関口虎雄、山田勇作、福原富代の三人が利息を払う条件で、会社勤めしている宗谷慎司から借金した。
しかし、三人は借金返済の期限をすぎても借金を返さなかった。宗谷慎司は、借用書を三人の実家へ持って行くといったが、それでも返済しない。
そこで、怒った宗谷慎司は福原富代に『身体を売ってでも金を作れ』といい、山田勇作と関口虎雄に、『大学で金払いのいい相手を探せ』といった」
「売春して、金、稼げってか？」
真理は言葉に詰まった。借金を返さないからって、なんて事をいうんだ！
「宗谷慎司は腹いせの一言だった。彼は後で三人に詫びている。
だが、彼の言葉は三人の殺意を喚起した。裁判で三人はそう述べた。
そして、ここにあるように、服役して三人がほぼ同時期に出所した。
ここまでが、山田勇作と福原富代、関口虎雄たち三人の共通点だ」
佐介がディスプレイを示している。
「三人って？」
他に何があるんだべ？真理はタブレットパソコンのディスプレイの三人を見て佐介を見つめた。
「山田勇作が死亡したから、残ったのは二人だ。今、その二人がここにいるんだよ」
「ええっ！どういうことだ？」
「福原富代と山田勇作はアドイベント企画の社員だ。関口虎雄は秋山事務所に所属してる。
現場で佐伯さんがそれとなく、奥山事件を調べて連絡してほしいといったんだ。県警の情報網だけでは、被害者の情報に確証が無いんだろうな・・・」
佐介は、タブレットパソコンで『借金未返済殺人事件』に関係した情報を調べる佐伯を見て淡々と話している。いったいどういう事なんだろう・・・。真理は何が起っているのか理解できなかった。
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