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葉雪女史がその先生の研究室を訪ねた際、その先生は読書をしていたらしい。
あと少しで読み終えそうだった為か、本からは目を離さずに葉雪女史の題名云々の話を聞いていたらしい。読んでいた本は、
「ガロアの夢―群論と微分方程式」
久賀 道郎
であり、その“久賀”氏の書いた本を読み“終えた”と同時に付箋にスラスラと何か書いて黙って葉雪女史へ手渡したそうだ。
・著「久賀 終」
・題「死に舞ふ蛾」
「『クガシュウなんてテキトー過ぎない? あたし腹が立って付箋を引っ掴んで帰ったわよ』 なんて言って怒ってたわねえ。
まあ、結局それをそのまま使うところが葉雪ちゃんの可愛いところなんだけどね」
遅くなったが、その先生の名は「車田 数多」 という。民俗学会ではかなり著名な人物らしい。
そうなると、なぜ民俗学の教授が数学の本を読んでいるんだという話になるが、それは葉雪女史の「死に舞ふ蛾」 を読めばおいおい分かって頂けると思う。
論理的思考、とでもいうのだろうか。
その訓練には数学の本が楽しめながら読めて良いらしい。楽しめながら、という点に限り僕は甚だ疑問だが……。
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