1章

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「またかよー。んじゃあ今度は絶対なー」 「じゃあね釣井君ー」 絶対という言葉に少し反応しながらも平常心を保ちつつ普通な顔で別れを告げる。彼らが教室から出た数分後に僕が教室を出る。彼らは別段嫌いという訳ではない。ただ会話や遊ぶといった行為が面倒なのである。人間嫌いな僕にとっては人と触れ合う事が煩らしくて不快感しかない。僕が普通の人間として繕っているのは安定している日常の崩壊に怯えているからである。 僕は小心者であるが故にいつも怯えている。そしてそれが悟られて馬鹿にされるかもしれないという懸念を捨てきれずにいる。最も僕自身クラスメイトを綿密に観察し人によって態度を使い分けているが性格の全てを知っているわけではなく僕のように繕っているかもしれない。人間関係というものは猥雑で恐ろしいものだ。一つ間違えればこれまで作り上げていたものがいとも簡単に瓦解する。
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