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ひゅんっとホラ穴に落ちたんだと思ったよ。
辺りは真っ暗闇で何も見えない。
ただの黒。
ひょいひょいと腕を動かしてみるが、それも見えない。
「おーい、誰かいますかー?」
僕は叫んでみたが、おかしなことに僕の声が響かない。
「おーい。」
やっぱりだ。
叫んでいるはずなのに、何も聞こえない。
「ひょっひょっひょっひょっ」
誰かの笑い声がする。
声の枯れ方からして、年老いた男性の声だ。
「だ、誰?!」
そう僕は言ったけれど、僕の声は何も聞こえなかった。
「わしか?わしはの、アンタたちの世界で言う、アレじゃの。あのー、何だっけの。
…あ~!あれじゃ!神じゃ!わしは神じゃ。」
僕はしばらく黙った。
だって、イマイチ状況が読めないからね。
自分のことを神というなんて、すごくボケたおじいさんだと僕は思った反面、この人は本当に神かもしれないとも思った。
僕には何も見えない。
ただおじいさんの声しか聞こえない。
僕は僕の姿が見えないし、僕の声さえも聞こえない。
すごくおかしな状況だ。
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