第1章

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ひゅんっとホラ穴に落ちたんだと思ったよ。 辺りは真っ暗闇で何も見えない。 ただの黒。 ひょいひょいと腕を動かしてみるが、それも見えない。 「おーい、誰かいますかー?」 僕は叫んでみたが、おかしなことに僕の声が響かない。 「おーい。」 やっぱりだ。 叫んでいるはずなのに、何も聞こえない。 「ひょっひょっひょっひょっ」 誰かの笑い声がする。 声の枯れ方からして、年老いた男性の声だ。 「だ、誰?!」 そう僕は言ったけれど、僕の声は何も聞こえなかった。 「わしか?わしはの、アンタたちの世界で言う、アレじゃの。あのー、何だっけの。 …あ~!あれじゃ!神じゃ!わしは神じゃ。」 僕はしばらく黙った。 だって、イマイチ状況が読めないからね。 自分のことを神というなんて、すごくボケたおじいさんだと僕は思った反面、この人は本当に神かもしれないとも思った。 僕には何も見えない。 ただおじいさんの声しか聞こえない。 僕は僕の姿が見えないし、僕の声さえも聞こえない。 すごくおかしな状況だ。
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