日常の終わり

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 どうしようか考えていると、大学生くらいの女性が本を抱えてうろう ろ周りを見渡しながら歩いていた。  どうやら席を探しているのだろう。元々図書館は本を読むところだ。勉強をして席を独占するのも悪い。いい機会だと思い、荷物をまとめてその女性に声をかけた。 「席譲りますよ。俺はもう帰るので」 「え、ありがとうございます。でも、友達探してるだけなので大丈夫です」 「……そうでしたか」  どうも締まらない。あのメールのせいだ。  八つ当たり気味にメールに悪態をつく。  もう集中できる気もしないし、昼前でキリもいいので広臣は近くのうどん屋へ向かった。  頼むものは冷やしうどん。天ぷらとおにぎりも取る。あたりでは珍しいセルフうどんなのだがなかなか美味い。  広臣は冷たいうどんの喉越しを感じながらいい具合に腹を満たしていく。  それにしてもだ。あのメールは一体何なのだ。昨日のアンケートのせいでおかしい。  そんなことを考えた時だった。携帯電話がポケットの中で振動した。メールを受信したのだろう。  広臣は体中の血が冷え切ったかと思うほど寒気を感じた。  まさかな。と思いスマートフォンの画面を見る。案の定メールだ。  先ほど確実に受信拒否したのだ。さすがに違うだろう。震える指でメールを開く。 『タイトル:異世界にへのアンケートにお答えいただきありがとうございました!』  バキッと手元で音がした。  右手で持っていた割り箸が折れた音だった。  広臣は気持ちを冷静にするためうどんをすすった。  すべて食べきったところでスマートフォンの画面を見る。  メールを削除。またも受信拒否。そしてメールアドレスを変えた。  もしかしたら友人のイタズラかもしれない。広臣はメールアドレスの変更を両親と妹だけに送った。  中学の連中はまたいつか送ろう。高校の連中は夏休みが終わった頃にまた交換すればいいだけのことだ。緊急の連絡など電話でもしてきたらいいだろう。
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