日常の終わり

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 しかもどうだろう。こんなものがもし叶っても楽しいだろうか。そんなはずがない。  どんな困難もなんだろうと何の苦労もなく乗り越えてしまう能力だ。  これはチートをしてゲームをクリアしているのと変わりないじゃないか。  元々ゲームは試行錯誤して、何度も失敗を繰り返してクリアしてこそ面白いのだろう。  それがなんだ。こんなチートを文面に起こしたようなふざけた文章は。  こんな能力を持ったところで楽しみもなく、人生に絶望してやがて自殺まで自分を追い詰めるとこだろう。  危ないところだったと広臣は息を吐いた。  危ない罠だったと、その文章を消してまた真っ白なアンケート欄になったところで広臣は随分と脱力した。  何をんしていたのだろうと。  今の自分の無様さとは何なのだろう。  受験生として一分一秒がもったいないというのに、このアンケートサイトに飛んてからもう一時間と10分が経とうとしていた。 「寝るか」  そう決めると随分とあっさりとしていた。  さっきまでの自分がアホらしかった。  こんな滑稽なものがあるだろうか。妄想を並べたような文に一時間も悩んでいたのだ。  そうか受験勉強で疲れていたんだな。と解釈してブラウザを消そうと閉じるボタンを押した。もう政治経済ニュースを読む気力も失せていた。 「あれ?」  閉じるボタンを押したつもりだったが、消えていないようだ。  やはり疲れがたまっているのだろう。今日はいつもより一時間多く寝よう。こんなアンケートともおさらばだともう一度しっかりとブラウザを閉じるボタンを押した。 「………………」  もう一度押す。押す。押す。押す。マウスを強めに押してみる。ダブルクリックとかしてみる。 「消えないじゃないかっ! ウイルスサイトだったかのか!? ええい。どうにでもなれ!」  よく見ると、送信するまでブラウザは消えません。と書かれている。  広臣は怒りに任せて思いついたことをアンケート欄に書き込んで送信ボタンを押した。
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