日常の終わり

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 凝った料理が作れるわけでもないので、冷蔵庫にあった鮭の切り身を焼いて、味噌汁をつくる。キャベツを刻んでそれぞれ盛り付ける。  自分の分の白米を装っているところで母親が起きてきた。 「おはよう。朝ごはん作っといたから」 「おはよう。ありがとね。明日はお母さんが早起きして朝ごはんつくってあげなきゃね」 「いいよ。俺のほうが朝早いんだからな」 「そう言ってないで。受験生なんだから少しでも楽にさせてあげないとね」  そんなドラマもよろしくな感動的な会話をしていると、あくびをしながら妹がダイニングに来た。 「お母さんと兄ちゃんおはよ。何二人共ドラマごっこでもしてるの? そういうのって二人のどちらか死にそうだよね」 「なんてことを言うんだ妹よ。今家族としての信頼を確かめ合っているんだ。あ、おはよう」 「ん。そだね」  高校一年生の妹はこの時間に起きるということは部活でもあるのだろう。適当な反応の妹は椅子に座り、広臣が白米を装って置いてあげる。  妹が朝食と広臣を交互に見て呟く。 「朝ごはん兄ちゃんがつくったの?」 「そうだが?」 「なんだ、死ぬのは兄ちゃんの方だったか……」  とても失礼なことを言われている気がするが、広臣もゆっくりしている訳にもいかないので妹の隣の椅子に座り一緒に朝食をとる。  朝7時に図書館が開くのだが、受験生や近くの大学生がよく集まる図書館のためすぐいっぱいになってしまうため、早めに行かないと座る席がなくなってしまうのだ。  広臣はすぐに朝食を食べ終えると自室に戻った。  白黒のボーダーのえ上から白のポロシャツをボタンを止めず羽織り、黒のショートパンツを履く。姿鏡で服をチェックし、ワックスで適当に髪に動きをつける。腕時計も忘れずに腕につける。  外出するのにある程度のおしゃれは必須だ。  まわりの目を気にするわけではないが、これは高校男子としての嗜みとして適当な服とボサボサの髪で出歩くわけにはいかない。  身長も平均以上には高く、スリムで小顔。整えられた眉にキリっとした目に筋の通った鼻。運動をしていたため引き締まった身体。  よし、今日もいつも通り100点だ。
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