阪口さんの好きな人

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(…あったかい…) 今は、何も語らずこうしてそばにいてくれることに、とても安心する。 手のひらと指先からじんわり伝わる体温に、ガチガチになっていた心がほぐれていくみたいだった。 …ああ。 私って、なんて弱いんだろう。 結局ひとりじゃ何も出来ない。 今、ただこうして待つことさえ、大野くんに支えてもらっている。 大野くんはすごいな。 とても強いし、頼りがいがあるし。 大野くんが居てくれて良かった。 本当に、…よかった……。 ――ギリギリまで緊張して、泣いた反動だろうか。 椅子に座ったことと、静かな廊下。 それに何より大野くんの温かさ。 ほんの少しの気が緩んだ私を、突然の睡魔が襲う。 だめ… こんなときに。みんな大変なときに。 眠っちゃだめ… 必死に抗おうとするものの、それに反してどんどん下がってしまうまぶた。 視界もたちまちぼやけ、狭くなっていく。 最後まで覚えていたのは、大野くんの手の温かさ。 いつしか。 私は意識を手放し、眠ってしまっていた。 * * * 「……ん……」 ふと目を覚ますと、辺りは更に暗くなっているように感じた。 日が完全に沈んだのだろうか。 蛍光灯の光も何だか頼りなさげだ。 …私、寝てしまったのか。 まだ、どこかぼんやりしている頭。 気づけば繋いでいた手はほどけていた。 目だけを動かして周りの様子を伺うと、大野くんの首筋が間近に見える。 いつの間にか、彼の肩に寄りかかってしまっていた。 (…ひ、わ、わわわ…!) 私ったら。 早く離れないと。 そう思いつつ、大野くんの様子をうかがうと、手を祈るようにあわせて俯いていた。 横顔でも、その表情の真剣さはよくわかる。
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