阪口さんの戸惑い

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……。 …………。 ………………。 …え? 「ええっっ!?」 私の裏返った叫び声が、教室に響き渡る。 大野くんは相変わらず、私を睨むように見ている。 「え、あ、…あの、大野くん? い、今…?」 「…あ?」 「…い、今…なんて?」 きっと私の聞き間違いだ。 だって、あの大野くんが私なんかに、そんな、まさか… 「…だから …俺と付き合わねえかっつったんだよ」 「きゃああああああ!!」 うそ。 またしても聞き間違い? それとも大野くんの冗談? 私、からかわれているの? 「…なんだよ、きゃーって。 そんなに俺と付き合うの嫌なのかよ」 「…い、い、嫌とかじゃなくて…。 だ、だって…その…信じられないというか…」 「は?」 「………じょ、冗談ですか?」 思わず敬語になってしまう私。 途端、大野くんの顔は見たこともないくらい険しくなり、机の上の手がグッと握りしめられた。 「ひぃ!」 ひょっとして殴られる? 反射的に身を固くするけれど、大野くんの握り拳は私に襲いかかってくることはなかった。 代わりに、深いため息が彼の口から吐き出される。 それは、とても切なげに聞こえた。 「……マジですけど?」 「………」 「…俺、そんな冗談言うやつに見えてた?」 「…っ…」 慌てて首を横に振る。 振りながら…ものすごく反省した。 私…大野くんに失礼なことをしてしまった…。
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