阪口さんの戸惑い

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「………」 「………」 気まずい沈黙。 何か言わなきゃと思うけど、何を言えばいいのかわからない。 手のひらに、じんわり汗がにじむのがわかる。 のどがカラカラに渇いていく。 さっき見つめられたときとは違う感覚で、胸がドクドクと暴れていた。 「………ふう」 再び、大野くんがため息をつくのが聞こえた。 机の上の握り拳は開かれ、そのまま完成した日誌を掴む。 その日誌で、気だるげに自分の肩を軽く叩いた。 「…まあ、返事はいつでもいいから。 そーゆーことで、よろしく…」 「え!」 「…それじゃ」 そう言って身を翻し、大野くんはさっさと教室を出て行ってしまう。 呆然としたまま、取り残される私。 緊張のあまりかいた汗が一気に冷えていった。 「………え?」 状況についていけない。 今、…何が起こったの? 日誌を書いてて 大野くんが来て ちょっとお話をして そしたら、こっちに近づいてきて 『俺と付き合わねえ』 『…マジですけど?』 「きゃああああああ!!!」 どうしよう。 告白だ。 私、大野くんに告白されたんだ。 なんで私?とか。 どこを好きになってくれたの?とか。 どうしてこのタイミング?とか。 疑問は色々あるけれど。 確かなことは、…大野くんはきっと、冗談でこんなことをする人じゃない。 私に…真剣に想いを告げてくれたんだ。
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