阪口さんの好きな人

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「……亜佳梨ちゃん…!」 廊下の向こうから、長居さんが早足でやって来た。 その顔は明るく、足取りもどこか軽く見えた。 「長居さん…! あの、おばあちゃん、大丈夫です! もう大丈夫だって…意識もじきに戻るって…。 本当に本当にありがとうございました」 まくし立てるようにお礼を言う私の横で、両親も深くお辞儀をして感謝を告げる。 長居さんは顔のシワを深くして、満面の笑みで何度もうなずいてくれた。 「…ああ。ああ。聞いたよ、良かったね、本当に」 「え? 聞いた?」 「そうだよ。今、そこで亜佳梨ちゃんのボーイフレンド…えーと…大野くんに会ったんだ。 ご両親も到着したし、おばあさんも大丈夫だったので帰りますって」 「お、大野くん、帰っちゃったんですか?」 「ああ。 ご家族の邪魔にならないようにと思ったんじゃないかな」 …そんな。 結局、支えてもらうばかりで、マトモなお礼も言えなかった。 最後には両親とばかり話してしまったし。 (…せめて、あとでお礼の電話を…) そう思いながらスマホを取り出すと、LINE通知が一件。 「……あ」 それは、大野くんからで。 『良かったな』 と、一言だけ送られていた。
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